どんなに高性能なハサミを使っても、誤って構えていれば思うようにカットできず、手首や指を痛める原因にもなります。とくに初心者のうちは、シザーを安定させる指の位置や力の入れ方を意識することが大切です。この記事では、美容シザーの基本的なもち方など、初心者が最初に押さえておくべきポイントを解説します。
美容師の基本!シザーの正しい持ち方と動かし方
美容師は、まずシザーの正しいもち方を身につけることが大事です。基本のもち方や動かし方が安定していなければ、思い通りのラインを再現することはむずかしいでしょう。静刃と動刃
シザーには「静刃」と「動刃」というふたつの刃があります。薬指を入れる側の刃が静刃で、カットの際は動かさずに固定しておきましょう。一方、親指を入れる側の刃が動刃です。ヒットポイントと呼ばれるゴムに指を当て、開閉して髪を切ります。両方の刃を同時に動かしてしまうと、カットラインが不安定になり、毛先がガタついたり、狙ったラインからずれたりする原因になります。正確にカットするためには、親指だけを動かして開閉するのが基本です。
シザーのもち方
シザーは、まず薬指を静刃側のハンドルリングに通し、人差し指と中指の第二関節あたりをハンドルに軽く添えるようにして安定させます。このとき、親指は動刃側のリングに通しますが、シザーを閉じる動作以外では親指を穴から軽く抜いた状態でも安定して保持できるようにすることが大切です。
シザーを握るのではなく「支える」感覚を意識することで、余計な力を入れずに自然な動きを保てます。
使い分けで差がつく!アウトサイド・インサイド・コーム持ち方
美容師のカット技術において、シザーのもち方や動かし方と同じくらい重要なのが「使い分け」です。なかでも「アウトサイド」「インサイド」「コーム」を正しく理解し、適切に使い分けることで、仕上がりの精度やスピードに大きな差が出ます。アウトサイドカット
アウトサイドカットは、毛束の外側をカットするときに用いる方法です。シザーをもつ手のひらが外側に向くように構え、親指を中心に動かしてカットします。親指はリングに軽く引っかける程度で、深く差し込みすぎないのがポイントです。薬指はシザーの第一関節から第二関節の間にのせるようにして安定させ、人差し指の付け根をネジ部分に添えて支えると操作が安定します。親指を深く入れすぎると動きが重くなり、シザーがぐらつく原因になるため注意しましょう。
インサイドカット
インサイドカットは、手のひらを自分側に向けてシザーを扱うスタイルで、髪の内側をカットするときに使います。下方向に引き出した毛束を切る場面や、刈り上げ後の直ばさみなどに欠かせない技術です。アウトサイドに比べてやや高度な技術が必要で、手首の可動域や指先の繊細な動きが求められます。
操作は、薬指を動かして刃を開閉するのが基本で、親指側の刃は固定するイメージで臨みましょう。薬指はリングに深く差し込まず、第一関節のあたりに軽くのせ、人差し指と中指をやや離します。
コームのもち方
コームのもち方も、基本動作のマスターに欠かせません。カット中はシザーとコームを同時に動かすのが基本スタイルであり、施術のスピードとうつくしさの両立のために重要です。コームは先端を髪側に向け、上に人差し指・中指・薬指をのせ、下側を親指と小指で支えます。このとき、力を入れすぎず自然に支えることで、手元の動きに柔軟性が生まれます。シザーとコームをもち替える動作を習得できるよう、しっかりと練習しましょう。
上達のための練習法と体ケア!新聞紙カット・握力トレ・正しい姿勢
美容師にとってシザーを自在に操ることは、デザイン力やセンスと同じくらい重要なスキルです。すぐにスムーズに動かせるようにならないため、初心者のうちはしっかり練習することが大事です。ここでは、上達のための効果的な練習法と、手や体を痛めないケア方法を紹介します。新聞紙カット
シザーの扱いに慣れるためにおすすめなのが「新聞紙カット」です。ウィッグでの練習の前に、新聞紙やレシートのような薄くやわらかい紙を使って、正確にまっすぐ切る練習を繰り返します。紙を左手で軽く押さえ、右手でシザーを開閉しながら、一定のリズムで切り進めていきましょう。最初は切り口がガタついてしまうこともありますが、親指の動かし方が安定してくると、スッと滑らかに切れるようになるでしょう。
真っ直ぐに切れるようになったら、スピードと正確さを両立させる練習に進みます。紙はどこにでもあり、安価で大量に用意できるので、気軽に繰り返せるのが利点です。
手のトレーニング
シザーの動きがぎこちなく感じる原因の多くは、手首や指の筋肉が十分に使えていないことにあります。指の動きが硬いとスムーズに開閉できず、無理な力が入って手を痛めることも。とくに親指のスムーズな動きが重要であり、空いた時間に指を1本ずつストレッチするだけでも柔軟性は高まります。
一方で、手の大きさや指の長さは人によって異なります。もしシザーが大きすぎたり重すぎたりすると、指に余計な力がかかって疲れやすくなるため、自分にフィットするシザーを選ぶことも上達の近道です。